「瑕疵担保責任」って何ですか?
Question
不動産の売却を考えています。
よく聞く「瑕疵担保責任」って何ですか?
聞きなれない法律用語でよく分かりません。
Answer
「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と読みます。
不動産売買契約の大切なポイントの一つです。
特に売却を考えている方はぜひご注意ください。
◆そもそも瑕疵とは?
瑕疵とは、キズや欠陥を指す法律用語です。
不動産の場合、大きく分けると
「目に見える瑕疵」と「隠れた瑕疵」
に区別されます。
例えば、洗面台の鏡が割れていました。
これは、買主が注意して不動産を見ていれば、
十分気がつく欠陥と言えます。
これが「目に見える瑕疵」です。
売主は欠陥がある分を価格に反映させたり、
引渡し前に修繕することになるでしょう。
買主は欠陥がある(あった)ことを承知で、
不動産を買うということになります。
しかし、契約の前に買主が気づかない!
そんな欠陥もあります。
例えば、シロアリ被害です。
買主が注意を払っても気づくことは難しい。
雨漏りなどもそうです。
このように、普通に注意している程度では
発見できない欠陥のことを「隠れた瑕疵」
と言います。
◆事故物件も瑕疵
瑕疵は物理的な欠陥だけではありません。
例えば、対象不動産が事故物件だったり、
暴力団事務所が近くにある場合なども、
精神的な面での欠陥があると認められます。
物理的な要因だけが瑕疵ではありません。
◆瑕疵担保責任とは?
瑕疵担保責任は、
「隠れた瑕疵」に対して売主が持つ責任
のことです。
これは買主の権利を守る制度です。
民法、宅建業法(宅地建物取引業法)、
品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)
といった法律に定められています。
買主から請求を受けた際には、
売主は誠実に対応する責任があります。
瑕疵担保責任のポイントは次の4つです。
1.買主が請求できる内容
瑕疵を見つけた時、買主が売主に請求できるのは
「損害賠償」と「契約の解除」の2通りです。
瑕疵の内容や程度によって、
修理費や慰謝料をもらうのか、
或いは売買契約を結ぶ前の状態に戻すのか
どちらかに決めることになります。
2.買主が請求できる期間
買主が権利を行使できる期間は、
買主が事実を知ったときから1 年です。
但し、引渡しされた時から10年経過すると
消滅時効にかかります。(最高裁判決)
3.「隠れた瑕疵」が対象
瑕疵担保責任の対象は「隠れた瑕疵」のみ。
簡単には発見できない欠陥が対象です。
「目に見える瑕疵」は対象にはなりません。
4.悪意や過失がなくても売主の責任
瑕疵担保責任は無過失責任と言われます。
売主が悪意を持っていなくても、
責任を負わなければなりません。
つまり、「売った際に過失は無かった」、
「万全の注意を払って欠陥が無いことを確認した」
と主張しても売主の責任になります。
以上が瑕疵担保責任のポイントです。
読んで頂いてお分かりの通り、
かなり買主の権利が強く守られています。
取引のケースによっては、売主の負担が
過剰に思われる時があるかもしれません。
それが原因で取引が不調におわる、
そんな場合も考えられます。
そうした場合を乗り越えるために、
売主買主双方の合意で出来ることがあります。
ここからは売主の負担を減らす方法について
見ていきましょう。
◆瑕疵担保責任に期限を設ける
先程の瑕疵担保責任4つのポイントの2番目、
「買主が請求できる期間」ですが、
10年は長いと感じた方もいるでしょう。
実は、売主が個人の場合は、
双方が合意すれば、期間を短く設定したり、
瑕疵担保責任を負わない契約もできます。
(業者が売主の場合はゼロにはできません。
必ず一定期間は責任を負います)
実際の市場では、売主が個人の場合、
2~3ヶ月間を瑕疵担保責任の範囲
とするケースが多いようです。
売買契約を結ぶ際には、この数字を目安に
瑕疵担保責任の期間を設定しましょう。
但し、期間を短くしたり、無しにすれば、
売却価格に影響する点は注意してください。
◆保険で売主の負担を減らす
瑕疵担保責任の期間が例え2~3ヶ月でも、
売主は損害賠償のリスクにさらされます。
こうした売主の不安や負担を解消するために、
「既存住宅売買瑕疵保険」があります。
この保険は、あらかじめ対象部分を決めて、
そこに瑕疵が見つかったら保険金がおります。
一般的に対象となるのは、
土台や柱等の「構造耐力上主要な部分」、
屋根や外壁等の「雨水の侵入を防止する部分」
です。
その他、保険法人によっては
「給排水管路」、「給排水設備・電気設備」
が対象となります。
◆瑕疵に気づいていながら売った場合には瑕疵担保責任は免除されない
売主が瑕疵担保責任を負わない旨の特約は
基本的には有効と説明しました。
但し、これが認められない場合があります。
例えば、売主が瑕疵の存在を知っていながら
買主に告げなかった場合です。
例え瑕疵担保責任を負わない特約があっても、
瑕疵担保責任を負わなくてはなりません。
(民法第572条)
以上、瑕疵担保責任について説明してきました。
売主の立場で考えてみますと、
瑕疵担保責任がある契約だと、
修理費や損害賠償のリスクがある反面、
高く売却するチャンスが増えるでしょう。
買主からすれば逆のことが言えます。
瑕疵担保責任を免除するかどうか、
或いは期間をどのくらいにするのか
双方が判断し合意すべき大切なポイントです。
先述の説明も参考にしていただいて、
瑕疵担保責任について考えてみましょう。