不動産登記には公信力が無い?
Question
「不動産の登記には、公示力はあっても公信力がない」と聞きました。
公示力?公信力?ちんぷんかんぷんです。
どういう意味でしょうか?
Answer
先ず、所有権移転のような法律行為を物権変動といいます。
日本の民法は意思主義を採用しているため、
物権変動は当事者間の意思表示(合意)だけで決まります。
でもそれだけだと第三者から分かり難いので、
「誰からも認識できる方法で公示しなさい」
と決められています。
こういう考え方を「公示の原則」といいます。
具体的な公示方法としては、
不動産では登記、動産では引渡しになります。
ただ、ここからが少しややこしいのです(汗)
ドイツのように民法が形式主義の国の場合は、
公示と物権変動の効力は全く同じになります。
つまり、公示(不動産なら登記)内容が保証されています。
でも日本やフランスのような意思主義の国の場合だと、
公示無しでも当事者の合意のみで有効になるので、
公示をするだけでは第三者に対して
権利を100%保障してくれません。
(実際はほぼ公示内容通りなのですが…)
言い直しますと、日本の登記制度では、
真実の権利関係と登記の記載が異なる場合、
仮にその登記の記載を信用して取引しても、
これを保護することができないのが原則です。
つまり、登記簿の記載より
真実の権利関係を優先させるわけです。
この状態を「公示(登記)に公信力(効力)が無い」といいます。
なんだかわだかまりが残りますが、
そういう法体系なのです。
これが「不動産の登記には公示力はあっても公信力がない(効力がない)」と言われる理由です。
じゃあどうすればいいのでしょう?
自分が買主の場合を想定してみましょう。
私が注意すべきと思う点は、
1.登記内容は必ず確認する。でも本当の所有者が異なる可能性を考慮する。
2.現地を必ず確認する。第三者の占有等の可能性を疑う。
3.契約に合意しても、自分の所有権を登記するまでは安心しない。
の2点です。
具体的には、
購入検討の調査時点、契約時点、引き渡し直前の時点で、
登記内容に変更が無いかに注意しましょう。
それと、目の前にいる取引相手が本当に本人かの確認も重要です。
考えをまとめて見ますと、
相手の所有権登記を100%は信頼できませんが、
自分の所有権登記は第三者への対抗要件になります。
(対抗要件になる=効力を発揮する)
つまり、他人名義の登記は信じ切っては駄目ですが、
自分名義の登記は十分に力になってくれるわけです。
ややこしいですが、大事な点です。
そして、不動産会社や司法書士の選定では、
こうした不安の解消に真摯に向き合ってくれる人を選ぶ事を、
最後に付け加えておきます。