「がけ」と擁壁の話① 『安息角』
建築候補地として、高台の眺望は魅力的です。
しかしこれを「崖の上の敷地」と捉えると、
がけ崩れのリスクが頭をもたげます。
実際、敷地が「がけ」の上や下にある場合の
建築規制についてのご質問も多いので、
今日から数回にわたって紹介していきます。
1回目の今日は、がけの危険性を考える上で
基本となる「安息角(あんそくかく)」の話を
していきましょう。
◆安息角とは?
「安息角」とは、土や粉粒体が滑り出さない
“限界の角度”のことを言います。
下の写真と図が、安息角のイメージです。
安息角より少ない角度に盛っていれば、
砂山は安定して崩れません。
◆条件で異なる安息角
安息角の角度は、土質に応じて変わります。
また切土か盛土かによっても違います。
わが国の「最も一般的な土」といわれ、
比較的崩れやすい粘土質の粘性土の場合、
安息角は30度とされています。
(砂質土や岩盤だと、もっと急こう配です)
各市町村が決めるいわゆる「がけ条例」では、
この最も緩い土質の安息角30度を規準にして
30度を超える傾斜地を「がけ」と規定し、
附近の建築を規制している場合が殆どです。
(高さは市町村によって異なり2~3m超)
◆建築してはいけない場所
がけ附近の地盤でも安息角の中にあれば、
地盤は安定していると考えられます。
逆に、安息角よりがけ寄りの地盤の上に
家を建てるのは危険です。
下図を見てください。
建物Ⓑは安定した地盤の上にありますが、
建物Ⓐは安息角の外にあり不安定な地盤です。
このように、安息角を理解すると、
がけ附近で危険な場所が分かります。
がけ条例では安息角30度の中になるように、
下端から高さの2倍の水平距離の間には
建物を建ててはいけないと規定しています。
でもこのままだと、敷地内で建築不可能な
場所が多くなってしまいます。
そこで「擁壁(ようへき)」を設置して、
安全に建築できる場所を増やします。
次回は「擁壁」を見ていきましょう。